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2010年12月03日

鮒寿司

作家の故遠藤周作さんがこよなく愛したといわれる 琵琶湖の固有種である似五郎鮒を加工した鮒寿司であります。
近年になって琵琶湖の水質汚染や 外来魚による生態系の異変などの原因により生息数が激減し 加えて手間と時間がかかる昔からの製法ということも相俟って この鮒寿司は大変高価な料理となってしまいました。
取り分け子持ちの雌の鮒寿司は ソフトでナチュラルチーズのような歯応えが人気であるようですが 私共のような庶民にはとても手が出せない食材であります。
もちろん私は食べたことがありません。
しかしこの今の鮒寿司の現状には亡くなられた遠藤周作さんも 草葉の陰でくしゃみをしておられるかも知れませんね。
製法は夫々の製造される方により多少の相違はあるものの 概ね春に内臓(卵は残す)を取り除いた腹部に塩を詰め 桶に入れて重石をかけ夏まで保存するという手順のようであります。
その後塩気が少し残る程度まで塩抜きして 再び今度は塩を混ぜた飯を腹部に詰め 桶にも鮒と飯を交互に敷き重石をかけて漬け込みます。
こうして年末まで待ちますが 場合によっては次の年末まで飯漬けすることもあり 非常に手間隙をかけた料理となっています。
樽や気象の状況に塩や飯との漬かり具合など 微妙な作業でありますので 二度と同じ寿司は出来ないとも言われています。
地元ではご飯ごと食べる方も多いと伺っていますが 一般的には飯を取り除き鮒のみが食されます。
そのまま戴きますと乳酸発酵特有の酸味と臭いが非常に強く 最初は全く受け付けられない方もいらっしゃるようでありますから 産地ではお茶漬けをお薦めされているようでもあります。

このように保存食として人間の知恵が育てた「熟(な)れ寿司」でありますが 漬け込む期間が長くなるほど 飯は殆ど液状化して食べられなくなり 魚体のみが食用されているようであります。

投稿者 Sugino : 2010年12月03日 02:01

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