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2007年02月12日

技(わざ)

先日は毎日夫人に掲載されました 比屋根千里さんの日本茶特集を引用させていただきましたが 本日は岐阜で木工品を扱う私共の仕入れ先のカタログに次のようなコラムが載っていて 読み入ってしまいましたのでそのまま掲載させていただきます。

狭いお店ですが 壁の絵から 掛け花迄これが私だとの気配を感じさせられる寿し屋さんを訪ねてみました。

「まな板について何か」という間の抜けた問いに「この店の晴れ舞台です」人に見られながら料理する寿し うなずける言葉です。
長さ1メートル20 幅40 厚み15センチ位のまな板を舞台に ご主人とお客さんの夜毎の即興劇があるのでしょう。
続いての「どんな風に手入れするの」との問いに「特別な事は何も」という返事 口が重くて言葉を選んで話す人だと待つ。
「2ヶ月に一度皮をむきます」
「表面にどうしても傷が付くのでカンナをかけます 難しくはない 丁寧に真っ平らにするように・・・」
「人にはさせません 私の使う道具ですから・・・」
日本酒を飲みながらもっと話を聞いてみたいと目をあわす。
「まな板は硬すぎても柔らかすぎてもいけないですネ 昔言われました。
“材料切ってまな板切るな”練習しました。まな板の上に薄板を置いて切るんです。材料がキチンと切れて薄板が切れないように」
大きなまな板の上では 野菜はココ 青魚は 貝類は白身はというように使う部位を決めていると話す。
若い修行時代に 最初に 最後まで言われたのは綺麗にだそうだ。
掃除から始まるのは日本の修行の常である。 口に尽くせないほど 清潔衛生を“本当に叩き込まれた”と言う。
おいしい以前にある心構えと思える。
「まな板の上にフキンを置く手が止まるんですヨ 置いたままで叱られた記憶があるので・・・」「まな板の上はネ 毎日塩で洗って 熱湯を掛けて 重いけれど起して 表裏拭き上げて終わりです」

カウンターの奥に猫柳とアネモネ 子手鞠の花。 その横に掛けられ使い込まれた雰囲気の半切。
独立より数年前購入した椹の桶ネジリタガ当時の財布には重い買い物だったらしい。いつか自分の店で使うぞとアクを抜き 紙に包み 乾燥しすぎて文字通りタガが外れてしまう事のない様丁寧に保存し 本格的に使われて十数年 今に至っているらしい。
勧めたり勧められたりのお酒のせいか ご主人の口も滑らかになる。
「半切の木が呼吸してネ 飯が温かいうちは湿気を吸い 冷めてくると飯が乾燥しないよう水分を補うんダ 木は良いネ 一緒に年を取ってくれるみたいで・・・ みがいて ふきあげて しわ増やしてネ」
イイ話ダヨネ 生活の周りがプラスチックを始めとする化学製品ばかりになって 昔ながらの木や竹の道具が姿を消している事に寂しさを感じていたけど 今日の話 プロの道具譲れない部分で自然の素材が息づいている 使われている事を嬉しく感じ元気になれた。

私もこんな会話を楽しみながら 飲んでみたいと思いつつ敢えて引用させて戴きました。

投稿者 Sugino : 2007年02月12日 03:51

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