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2009年01月05日

漆について

未だお屠蘇気分の皆様に 漆という堅苦しい話で恐縮です。
10年程年輪を重ねた漆の成木の幹に傷を付けて そこから滲み出てくる僅か5g程の一滴の樹液が漆です。
取り出したばかりの漆は乳白色ですから 「これが漆?」と思われるかも知れませんが 空気に触れることによって酸化し 見慣れた褐色の生漆となります。
これを漆掻き職人の方たちは 山を歩き回って集めるのです。
これも気の遠くなるような作業ですね。
この漆は狩猟時代には 既に矢尻の固定や弓の補強などの接着剤として利用され(今も金継ぎ等に名残があります) その後も縄文時代に入りますと 木器や土器の補強用 そして水漏れ防止にと使われた証が残っています。
漆は塗った後乾いて堅牢で風合いのある塗膜となりますが この漆の乾燥は洗濯物や合成塗料が 水分や溶剤を蒸発させて乾くのとは異なり 温度が20~30度,湿度が70%前後に管理された 室(むろ)と呼ばれる部屋で 急がずゆっくり且つ慎重に乾燥させます。
漆はその中に含まれる酵素の働きで 空気中の酸素と主成分が化学反応を起こしながら 高分子化して固化するのです。
木地師からあがった挽き立ての素地に 漆をシッカリ浸み込ませて木地固めをし 研ぎを入れた後仕上げまで 何度も塗っては拭いて乾かしを繰り返します。

この漆塗りの職人の皆さんを塗師屋(ぬしや)と呼んでいますが 呼吸している漆器であり 生き物である木や漆が相手の仕事ですので 冷暖房が使えないという過酷な作業となっています。

投稿者 Sugino : 2009年01月05日 06:42

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