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2007年06月04日

安南手と御深井

文字通り安南(ベトナム)から渡来した焼物で 青磁,赤絵,緑釉など多種に亘り船で運ばれて参りました。
中でも中国の影響を受けた灰釉を使った染付は代表的なものですが 釉薬の性質上溶け易く亦流れ易いため 紋様の渕が滲んでぼやけたようになっているのが特徴です。
このぼかしの紋様に味があるとの評価を得て 現在でも日本で継続して造られています。
現在では転写の技法も発達し 過っての手描の味もこの技法によって上手く出せるようになっていて 判別し難くなっています。
写真は手描の安南手湯呑ですが 滲み具合をどうぞ存分にご賞味下さい。

亦 この釉薬は還元焔を使いますと 安南手(酸化焔)とは趣の違った御深井(オフケ)の色調となります。 (ご紹介の写真は御深井の銘々皿です)
御深井は旧尾張藩のお庭焼(大名などが自身の藩内に窯を築き焼いた焼物)が原点で 名古屋城内の御深井丸に窯が築かれたのがこの名の由来です。
長石に木灰を混ぜてつくった釉薬が 焼成中に釉薬内の鉄分によって淡緑色に発色し 青磁に近い感覚の焼物となります。
比較的端正な趣があり このためある意味おどけた織部に対して 「綺麗寂」と呼ばれて参りました。
このように陶器の場合偶発によって人の感性に響く作品が多々あり 偶発の証明には可也時間が浪費されたと思われますが 結果現代にも伝承され伝統的図柄として今も息衝いているのです。

投稿者 Sugino : 2007年06月04日 07:30

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